雑記

たまに更新します。まだあまり使い方がわかっていません。

「ABCの歌」が変わったらしい話

ブログを始めてみることにしました。あまり書くこともないただの一般人ですが、気が向いた時に何かを書き残していこうと思います。テーマもトピックも特に限定しない予定です。

本題

今回はきらきら星のメロディーに乗せて歌われる「ABCの歌」の話。既に数年前となっている記事ですが、Googleにて「ABCの歌 変わった」と検索すると以下のような記事がヒット(全内容は元リンクをご覧ください)。

https://otakei.otakuma.net/archives/2022101904.html

成程「LMNOP」(海外で一般的)と「LMN」(少し前までの日本で一般的)という歌詞の区切りによる相違が生じているということのようです。……とこれだけで終わってはつまらないので、少しその理由に対する考察をしてみたいと思います。

幾つかヒットしたサイトを見ていると、「なぜ日本ではLMNでの区切りになったのか」には触れられていますが、では「なぜ本来はLMNOPまで(無理やり)詰め込まれていたのか」という疑問に対する話はどうにもあまり見つからないようです。そこで、本稿では後者に対する一つの考察を挙げます。

まずは歌詞を見てみる

日本版(「LMN」)はこんな感じ。

A-B-C-D-E-F-G

H-I-J-K-L-M-N

O-P-Q-R-S-T-U

V-W-X Y and Z

Now I know my ABC,

next time won't you sing with me?

一方の海外版(「LMNOP」)はこんな感じ。

A-B-C-D-E-F-G

H-I-J-K-L-M-N-O-P

Q-R-S T-U-V

W-X Y and Z

Now I know my ABC

next time won't you sing with me?

よく見ると、LMNOPの区切りに伴ってVの位置も異なっているようです。

なぜ「詰め込む」か?

結論から言ってしまえば、恐らくは英語の特徴として有名な「韻を踏む」ためということになるのだと考えられます。とはいえ、この「韻を踏む」という英語の性質は日本人が考えるような韻の踏み方よりもかなり強烈に(特に英語の歌や詩の脚韻については)固執しているように見えます。

英語でも子供のうちによく親しむはずの(=無意識のうちに言語文化として無意識に根付く)童謡からふたつ例を挙げてみます。以下、少し発音記号を取り入れてみますが、あまり馴染みがなくても「最後の方の記号が同じだなー」ぐらいのことがわかればいいと思います(かくいう私も発音記号はあまり詳しくないので)。

①「大きな栗の木の下で」

Under the spreading chestnut tree

There we sit both you and me

Oh how happy we will be

Under the spreading chestnut tree

各行末のtree[tríː]、me[míː]、be[bíː]*1を書いてみると[íː]で韻を踏んでいる様子が見られます。

②「あたま、かた、ひざ、あし」

Head shoulders knees and toes knees and toes

Head shoulders knees and toes knees and toes

And eyes and ears and mouth and nose

Head shoulders knees and toes knees and toes

これを見て「なぜ頭から足にだんだん降りていくのに、口の後に鼻がきて逆転してるの?」と思う方もいらっしゃることでしょう。ところが再び各行末を見るとtose[toz]、nose[nóʊz]*2と[z]で韻を踏んでいるように見えます。最後がmouth[mάʊθ]だと……あまり韻は踏めそうにないですね。

そこで再び「ABCの歌」に戻ってみましょう。歌詞を再掲します。

日本版(「LMN」)はこんな感じ。

A-B-C-D-E-F-G

H-I-J-K-L-M-N

O-P-Q-R-S-T-U

V-W-X Y and Z

Now I know my ABC,

next time won't you sing with me?

一方の海外版(「LMNOP」)はこんな感じ。

A-B-C-D-E-F-G

H-I-J-K-L-M-N-O-P

Q-R-S T-U-V

W-X Y and Z

Now I know my ABC

next time won't you sing with me?

海外版をみると、G[dʒíː]、P[píː]、V[víː]、Z[zíː]、C[síː]、me[míː]と、完全に綺麗な韻が踏まれている(!)ことが見て取れます。ところが日本版だとN[én]、U[júː]とどうにも韻が踏めそうにないです……。つまりここまで歌詞を詰め込んだのは、「その近辺で韻を踏める音がPだったから」だと言えそうです。

ここまで書いて

さらに調べると、こんな記事が見つかりました。

https://uechikablog.com/nursery-songs/59/

ここで書いたこと全部書いてあった……。この記事にあるように、S[és]とX[éks]も韻を踏んでいます。とはいえ、ここでおしまいにしては単なるn番煎じになってしまうので、もう少しお付き合いください。

上の記事、最後に気になるこんなことが書いてありました。

まれにドレミの歌みたいに韻を踏まない変わった歌もあります。この歌は英語と日本語を比較し、可哀想な「ラ」について考察していますので是非読んでみてください。

……いや待てよ、ドレミの歌も韻を踏んでいるのではないか?ということで、それも考えてみましょう(予めお断りしておきますが、このブログは、上の記事を含む何か他の方々の主張に対してそれを批判するものではありませんし、その意図もございません)。

ちなみに、上の記事にリンクが貼ってあるドレミの歌に関する記事も興味深い内容は多かったです(リンク↓)

https://uechikablog.com/nursery-songs/83/

ドレミの歌は韻を踏んでいないのか

ドレミの歌の歌詞も書いてみます。

Doe a deer a female deer

Ray a drop of golden sun

Me a name I call myself

Far a long long way to run

Sew a needle pulling thread

La a note to follow So

Tee a drink with jam and bread

That will bring us back to Do

 

やはりどうやら行末では韻を踏んでいるように思えます。 1・3行目はdeer[díɚ]とmyself[mɑɪsélf]で韻は踏んでなさそうですが、2・4行目のsun[sˈʌn]とrun[rˈʌn]、5・7行目のthread[θréd]とbread[bréd]、6・8行目のSo[sóʊもしくはsˈəʊ]とDo[dóʊもしくはdˈəʊ]*3

 

とはいえ

やはり韻の踏み方が物足りない……というのは思うところではあります。そんなことを感じるともはや韻中毒。

この韻踏中毒は英語の歌にはかなり多いことのようで、例えばBeatlesの代表曲のひとつ「Yesterday」だとこんな感じで韻を踏んでます。

Yesterday all my troubles seemed so far away

Now it looks as though they're here to stay

Oh I believe in yesterday

 

Suddenly I'm not half the man I used to be

There's a shadow hanging over me

Oh yesterday came suddenly

 

Why she had to go I don't know she wouldn't say

I said something wrong now I long for yesterday

 

Yesterday love was such an easy game to play

Now I need a place to hide away

Oh I believe in yesterday

 

Why she had to go I don't know she wouldn't say

I said something wrong now I long for yesterday

 

Yesterday love was such an easy game to play

Now I need a place to hide away

Oh I believe in yesterday

away[ʌˈweɪ]、stay[steɪ]、yesterday[ˈjestɜ:ˌdeɪ]、say[seɪ]、play[pleɪ]で全て[eɪ]、be[bi:]、me[mi:]、suddenly[ˈsʌdʌnli:]で全て[i:]として韻をそれぞれ踏んでいることから、この曲は「全ての行末で韻を踏んでいる」曲になります。*4

最後に

ABCの歌が変わった(元に戻ったという方が正しい?)という話から、歌詞が詰め込まれた背景である(と考えられる)英語の歌の韻の話を少し書いてみました。私は英米文学を専攻している人間でもないので、間違いがあったら「(あまり攻撃的にならずに)そっと優しく」教えていただけると泣いて喜びます。その他のコメントも大歓迎です。

勝手にサイトを引用してしまった方々、大変申し訳ありません。ブログを書くのってこんなに疲れるんですね。たくさんブログを書かれている方を尊敬します。

ちなみに私が特に好きな英語の歌(の韻)はBilly JoelPiano manに出てくる「And he's quick with a joke or to light up your smoke」と「And he's talkin' with Davy who's still in the navy」の二つです。歌ってて気持ちいい

最後まで読んでくださりありがとうございました。

*1:実際にはmeとbeのこの発音記号は米語の強形で、日常会話で使われるのは弱形ですが、歌詞の中での考察は現実問題としてこの表記通りで差し支えない気がしてます。詳しい方がいらっしゃったらご教授いただけると幸いです。

*2:米語。ちなみに英語だとtoes[təʊz]、nose[nˈəʊz]です。こっちの方が韻を踏んでいる様子は見やすいかもですが。

*3:このSoとDoは当然ながら英単語のSoやDoとは違います。音(階名)を表すものでSoはsolが元のようです。

*4:さっきとmeやbeの発音記号が違うじゃないか、というツッコミがあれば嬉しいのですが、Beatlesはイギリス出身のため、これだけは英語(イギリス英語)の発音記号で書いておきました。